そもそもの原因、といえなくもない奴に相談するのもあれだが、俺なんかよりずっと頭の切れる、この組織のブレーン的存在であるパオロならば良い考えを教えてくれるかもしれない。それに先程別れたばかりだから一番探しやすいだろう。俺はパオロを探すことにした。先程パオロの去った先へ向かうと、すぐにその姿は見つかった。向こうも足音で俺に気づいたらしく、ニコリと一見人当たりの良さそうな笑みを浮かべる。しかしこいつは他人をからかうのが好きな悪癖があるので、油断は出来ない。
「あれJJ、どうしたのさ」
「……少し、相談があってな」
「へえ、珍しいこともあるものだね、君が相談なんて。何?」
俺は当てつけにならないよう注意しながら、パオロに事の次第を話した。といっても状況的に嫌味に聞こえてしまうかもしれないと思ったが、パオロは気にする様子もなく、相槌を打ちながら興味深そうに俺の話を聞いた。それはそれで釈然としないものがあるが、まぁそれはいい。
「何だ、何かと思えば、簡単な解決法があるじゃないか」
「そうなのか?」
「うん。JJ、自分をボスにプレゼントすればいいんだよ」
「……は……?」
今日、パオロ相手にこんな間抜けな声を上げるのは2回目だ。流石頭の回転が速い奴は解決法を導き出すのも容易いことなんだなと感心したのもつかの間、その口から告げられた回答は俺の予想の斜め上をいくものだった。開いた口が塞がらない状態の俺に、パオロはいつもの柔和な笑みを浮かべながら続ける。
「イタリアではそういう習慣があるんだよ、好きな相手に自分をプレゼントするって。元々は貧民の人達が恋人を最大限喜ばせようとして広まった風習なんだけどね、結構洒落が効いてるし、何よりとてもロマンチックだと思わない?」
「あ、あぁ……まぁ、言われてみれば……」
「自分自身を贈って、2人の時間を一緒に過ごすのがプレゼント。貧しくても心は豊かになれる素敵な贈り物だよね、JJもそう思うだろう?」
「あ、あぁ…………?」
「ボスはそういうの、すごく好きだと思うなぁ。あ、因みにわかりやすいように自分自身にリボンを巻いて相手の家を訪ねるのが基本かな。よかったら僕の方で用意しておくよ」
「お、おいパオロ、まだやるとは一言も……」
何だか不穏な気配を感じ始めた俺は、やんわり拒否しようと口を開くがそれは途中で、パオロの有無を言わせない笑みによって遮られてしまう。「じゃあ、あとでJJの部屋に届けさせるね」と言って最初の時のように身を翻し去っていってしまう奴を、俺は呆然と見送ることしか出来なかった。
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23日深夜へ