こういったときに一番相談しやすい相手といったら、やはり石松だろうか。豪快で男気に溢れ、兄貴分として頼られている奴ならば俺の相談にも乗ってくれるだろう。俺は石松を探すことにした。しばらく屋敷内をうろついていると、奴の後ろ姿を見つけたので「石松」と呼び掛ける。振り向いた石松は俺の姿を見ると、からかうような笑顔を口元に浮かばせながら近付いてきた。
「JJ、珍しいこともあるもんだな、お前から声をかけてくるなんて」
「……そうか?……いやそんなことより、今時間はあるか?」
「少しくらいなら構わねえよ、何だ?」
2つ返事で了承してくれた石松に、俺は事の次第を話す。パオロから、今日になって瑠夏の誕生日の変更を聞いたこと、プレゼントを用意していたがどうしても届くのは明日になってしまうこと、そして何か代わりになるような良いプレゼントはないか、と。瑠夏に事情を説明して明日渡しゃいいじゃねえかとも言われたが、手ぶらで祝うのはどうにも座りが悪いと伝えると石松は納得してくれた様子で、顎に手を当てながら考えるような仕草をする。しばらくの間の後、その口元がニイッと上がり笑みの形を作った。
「仕方ねえ、俺様秘蔵のウイスキーを分けてやるよ」
「は……ウイスキー……?」
「ま、遠慮すんな。夕方までにはお前の部屋に届くよう手配しといてやる。感謝しろよ?」
「あ、おい……!」
からからと笑いながら「気にすんな、じゃあな」と言いながら一方的に話を切り、仕事に戻ってしまう石松。ここの幹部たちは人の話を最後まで聞くということを知らないのか。瑠夏も、素でなのかわざとなのか人の話を最後まで聞こうとしない所がある。ボスがボスなら部下も、ということだろうか。
まぁ、いい。石松も瑠夏に渡すと知っているなら下手なものは渡してこないだろう。それに奴らは散々瑠夏の晩酌なりに付き合っているのだろうから、酒の好みは把握しているはずだ。任せても問題はないだろうと判断し、俺も自分の仕事に戻ることにした。
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23日深夜へ