腹の中に詰め込まれたものが、男の指で更に奥へと押し込まれる。ひとつに括られた両手をきつく握り締めながら苦しさに耐えていると、ようやく中から指が抜けていった。

「あ……く、は……っ」
「ふふ、苦しそうだね……可愛いよ、JJ……」

熱に浮かされたような声で名前を呼ばれると、身体の芯が甘く震える。昂ぶった己のものを俺の腰へと擦りつけながら耳の後ろをぬるりと舌で舐めてくる瑠夏、その表情を見ずとも興奮している事が伝わってきた。つられるように煽られた身体が内部に埋められたものを締め付けると、その異様な感触が嫌でもはっきりと感じられる。

「瑠、夏……いい、加減……悪趣味な、事は……っ」
「キミだって興奮してるじゃないか、さっきから漏れっぱなしだ」

そっと絡みついてきた指が、先走りでドロドロになっている俺のものを緩く扱いた。先程から中途半端に刺激され続けていたそれは、その弱い愛撫でも急速に昇り詰めてしまう。

「あっ、あ……っ!」
「気持ち良いかい?こんなに震えて……」

内腿から尻までを大きな掌が滑っていく、絶頂の間際で震えていた下肢を愛おしそうに撫でる男に感じるのは、自分の甘さ故の後悔だ。
新年を迎えるパーティーの最中、瑠夏に抜けようと提案された。一番盛り上がるであろう年の変わり目にボスであるこの男が居ないのはどうかと思いつつ、相変わらずの強引さに仕方ないと連立って部屋に戻った、まではよかったのだが。
「折角だから、今年出来なかった事をしよう」「もっとキミの色んな姿が見たいんだ」「いいだろう?JJ」そう身体を密着させながら甘く囁かれ、嫌な予感にも不穏な気配にも目を瞑ってうっかりと身を委ねてしまった自分が悪い。瑠夏は俺の絆し方など、もうすっかり把握しているとわかっていたのに。

「何、が……したい、んだ……あ、うっ……」
「ねぇJJ、さっきキミの中に入れてあげたもの、手を使わないで出してみて」
「……っ!出来るわけ、な」
「上手に出来たら、今キミが一番欲しいものをあげるよ……?」

尻の間に濡れた熱の塊が押し付けられ、喉の奥から欲しがるような吐息が漏れる。ローションですっかり慣らされた後孔を埋めているのは、いくつもの小さな丸い球。何個入っているのかは、抵抗を続けている内にわからなくなっていた。
瑠夏の熱を覚えている身体が更に疼きだす、要求に応えなければ本当にしない気なのだろうか。そんな訳ないと思うが、それより自分が長くを耐えられそうになかった。今すぐにでも中のものを掻き出して、瑠夏が欲しい。深くまで埋めて自分の内を満たして欲しい。
だが、男の要求はあまりに酷だ。恥ずかしさで死んだらどうしてくれようという程に、想像だけで頭が焼けつきそうだった。

「っ、う……瑠夏……」
「……駄ぁ目。そうやって誘って、ボクを陥落しようとしたって無駄だよ」

ちょっと危なかったけど、と呟く瑠夏は、俺のうなじをガジと軽く噛んでから身体を離す。体温が奪われたような喪失感に首を捻り視線だけを男へ向ければ、少し困ったような表情で俺を見つめていた。

「……っ……せめて、指で……」
「手を使わないで、って言っただろう?キミが死ぬほど恥ずかしがる姿を、ボクは見たいんだ」
「っ……最悪、だ……!」

悪態も絶え絶えの呼吸の合間ではまるで格好がつかない、枕に顔を押しつけてせめて自分の姿もこれからしようとしている事も目に入らないように。瑠夏はこうと決めたら、特にこういった時ほど頑ななのは教え込まされている。
だから、自分が折れるしかない。

「んっ……く……っ」

熱が上がる一方の顔を枕へ擦りつけながら、腰は高い位置に。そのまま腹に力を込めれば、中のものがゆっくりと外へ向けて押し出されていくのがわかる。気持ちが悪い、違和感しかないそれは、窄まりの縁を広げながら嫌になるほどゆっくりと出ていった。

「う……はぁっ……」
「……ふふ、1個目だ」

視界の端で瑠夏の様子を窺えば、俺が出した球をシーツの上で転がしながら満足そうに笑っている。後これが何回続くのだろう、恥ずかしさで死ねるのならいっそ今殺してくれ。

「は……っ、も……瑠夏、頼む、から……」
「そんなに瞳を濡らして……仕方ないな、少しだけ手伝ってあげる」
「何……っ!止め、あっ……!」

すぐ傍に膝をついた瑠夏は、俺のしなった背中へ愛おしそうに頬を擦り付けると、腹に手を添え突然強く押してきた。止めてくれるのかと、一瞬油断した身体はその衝撃に抵抗の手段すら選べず、後孔からいくつかの球を吐き出してしまう。


「嫌、だ……っ!あ、離せ、瑠夏……っう、く……」
「駄目だ、まだ残ってるだろう?2、3……ほら、また出てきた」
「あっ、ん……っ、ふ……!」

腹を押しているのとは逆の手が後孔にゆるく入り込んできて、また中から異物が出ていった。腹の中の圧迫感は減っていき、代わりに漏れていく喘ぎを枕で塞ぎながら必死に抑える。
何が楽しいんだ、こんなこと。異常で、変態的な性癖だ。だがそれに流されながらも付き合ってしまい、こうして快楽を感じている俺は、きっとそれ以上におかしい。

「はっ、あ……出、ない……んっ」
「まだ、奥にひとつ残ってるみたいだね……JJ、おいで」

背中を優しくさすられ、顔を上げると軽く両手を広げて俺へ微笑みかけている瑠夏の姿。躊躇しながらも、この募りに募った物足りなさをどうにかしてくれと身体を起こし、倒れ込むようにして瑠夏へ縋る。頬や額に何度もキスを落とされながらその腕の中に収まると、瑠夏は背中から俺を抱きしめながら、力なくシーツに落とされていた手を掴んだ。
導かれた先は先程からの行為ですっかりやわらかくなった後孔で、何をさせたいのか言われなくてもわかってしまった。

「少し、は……優しくしろ」
「あぁ、拗ねないでくれよJJ。ほら、もう少しだけ頑張ってくれたら、沢山優しくしてあげるから」
「……激しくの間違いじゃないのか」

背中に当たる硬く昂ぶったものに、わざと身体を擦り付けてやる。小さく呻きを漏らした瑠夏は「悪い子だ」と熱い呼気を耳に吐きかけながら、両手を俺の胸へ滑らせてきた。

「んっ……あ、っ、んんっ」
「身体の全部でボクが欲しいって言ってるのに、まだ意地を張るのかい?」
「痛っ、あ……わか、った……っやれば、いいんだろ……!」

きつく摘ままれた突起から痛みとじんわりした熱が降りてくる。誘惑と崩れた理性と身体の疼きに負け、まだ異物の残る内側へ自分の指を潜らせた。すんなり根元までを埋めると、指先につるりとした感触が当たる、最後のひとつはこれだろうと指をくねらせ掻き出そうとするが、滑りの良い中では下手をすると更に奥へと入り込んでしまうと、内を探りながら思考錯誤する。

「ん……っ、く、は……」
「……っ」
「あっ、う、んっ……」

指を動かす度に、掻き出す事とは違う事へ意識が逸れそうになってしまい逆の手を瑠夏の服へしがみつかせた。驚いたように身体を揺らす瑠夏が、更に身体を密着させてくるので余計目的を見失いそうになる。
俺もだが、見ていただけの瑠夏も相当限界のはずだ。早くしなければと焦る程に、奥の球はなかなか動いてくれない。

「JJ、指を抜いて」
「っ……まだ、駄目だ、瑠夏っ」
「心配しなくても、手伝ってあげるだけだよ」
「手伝って……?っ、あ……!」

言われた通りに指を抜くと、代わりに俺のより長く骨ばった二本の指がより深くへと入り込んできた。中を広げながら注意深く探るように動くそれは、すぐ中の球をひっかけゆっくりと出ていく。

「あっ、あ……っ!」
「ん……最後の一個だよ、JJ」

ぬらぬらと光り濡れている球を俺の眼前に晒すと、瑠夏は「気持ち良くて出しちゃった?」とからかうように囁いてきた。浅い部分を過ぎる時、わざとだろうが弱い部分を擦られ、中途半端な刺激に勃ちっぱなしだったものは勢いよく白濁を吐き出してしまったのだ。
突起を弄っていた手が腹や胸に飛んだそれを掬うと、脱力し薄く開いていた俺の口へと挿し込んでくる。苦みと独特の青臭さに眉を寄せれば、すぐ顎を掬われ唇同士が重なった。
少し余裕のないキスに、知らず口元に笑みが浮かぶ。ざまあみろでもないが、俺だけではなく瑠夏も焦らされていたのだとすれば少しは溜飲が下がる思いだ。絡め取られた舌の間で唾液を交え、最後に甘く吸われるとぞくりと快感が広がっていく。

「っ……!おい瑠夏、急に、んっ」
「ん……は、もう限界だ、挿れるよ」

突然仰向けに押し倒され、両脚を上半身につくくらい深く折り曲げられた。足の間に入り込んだ瑠夏は俺の脚を大きく広げ、太股を強く掴んでくる。まだ敏感な肌が、後孔にあてがわれた熱で粟立った。先程まで埋められていたものとは全く違う大きさのそれが埋められていくと、もうすっかり慣らされた身体は無理矢理押し拡げられ、粘膜が擦れ合う感覚からも易々と快楽を拾っていく。

「それで、沢山激しくされたいんだっけ?」
「は……っ、違う、あれは言葉の綾でっ」
「いいよ、大歓迎だ。キミが積極的で嬉しいよ、JJ」

にっこりと笑った瑠夏は、その笑顔のまま球や指で散々嬲られていた奥を深く抉ってきた。限界まで畳まれた身体も苦しいが、腹をギチギチに埋められて余計に息が継げなくなる。何かにしがみつきたくて両脚で瑠夏の腰を挟み腕を首の後ろへと回せば、満足したような吐息が落ちてきた。
しかしその穏やかさも一瞬の事で、すぐに獰猛な責めが俺の意識を奪っていく。

「ひぁっ、あ!瑠夏、待っ、んっ……!」
「JJ、気持ち良いかい……っ?」
「うぁっ、良す、ぎる……っあ、あぁ……!」
「んっ……は、ボクも、気持ち良すぎて……っ、持ってかれそうだ」

汗ばんだ肌を擦り合わせながら、興奮に赤らんだ顔で瑠夏はまた笑う。そうして何かに気付いたように一度視線を上げると、俺を抱き起こしベッドの上に座りながら頬にキスを落としてきた。

「っあ……!ば、か、いきなり、体勢を……っ」
「あけましておめでとう、JJ。今年もいい年になりそうだよ」

上に座らされた事でさっきより深く瑠夏のものを飲み込みこまされ、正直新年のあいさつどころではない俺は力なく瑠夏へと身体を預ける。年の初めからこうでは先が思いやられると絶え絶えの呼吸で告げれば、俺にそう思わせた張本人は「そうかなぁ」と相変わらず楽しそうな笑みでとぼけていた。
窓の外にはまだ真っ暗な空。日の出まではまだまだあるが、どうせそれまで付き合わされる事になるのだろう。

「好きだよJJ、また一年よろしくね」

だから、そう極上に甘い声で囁いてくる男に絆されてやるかは、眩しい朝日に焼かれるまでに決めようと思う。



おわり


あけましておめでとうございます!

[2013年 1月 4日]