恥じらう顔が見たいから
「っ、瑠夏、やめ……!」
「コラJJ、おとなしくしてくれないとうまく入らないだろう?」
「嫌だ、離せ……っ!」
「……っと、よし」
俺を後ろから抱き込んでいた瑠夏は、ようやくその身体を離した。俺は息を荒くしたまま間抜けな格好をしてベッドに座っている。俯くと、ひらひらと無駄な装飾がされた……女物の服が目に入って、死にたくなった。
「ふふ、よく似合うよJJ」
「似合ってたまるか……」
夜、瑠夏に呼ばれ部屋に来る、ここまではいつも通りだった。寝室へ連れられ、組み敷かれ服を脱がされるのもまぁ、いつも通りだ。ただ、その時瑠夏が見覚えのないものを手に持っていたのはいつも通りじゃなかった。
どこから手に入れたのかフリルの沢山ついたひらひらのドレスを持っていた瑠夏は、俺が口付けと愛撫でぼんやりとしているのをいいことに無理矢理その服を着せてきたあげく、「こんなに可愛いのを着てるんだから、下着も可愛くしないとね」と言い出しまたもひらひらとした下着を穿かせようとしてきた。形はボクサータイプのものだがどう見てもそれは女物で、勘弁してくれと暴れたが必死の抵抗も空しく瑠夏は俺を抱き込みながら器用にその下着を俺の足に通してしまう。
「本当に似合っているよ、脱がすのがもったいないくらいだ」
「あっ……!お、い、瑠夏……!」
瑠夏は先程自分で結んだばかりの俺の胸元に付いているリボンをするりと解くと、ボタンを外しながらそこから手を滑りこませ胸を撫でる。そのまま体重をかけ俺の身体を倒すと、その上に覆い被さりやけに楽しそうな表情で俺を上から下までじっくりと眺める。
「っ……あんまり、見るな……」
「どうして……?あぁ、恥ずかしいのかい?」
「んっ……うる、さい」
「可愛いなJJ……そんなキミも新鮮で、すごくそそるよ」
そう耳元で囁かれ、ぞくりと身体が震える。瑠夏の指が胸の突起を掠め弱い快楽がゆっくりと身体を熱くさせていく。愛撫の途中でこの恰好にさせられその間もやたら煽るような触れ方をしてきたせいで、焦らされた身体は瑠夏の手が与えてくる刺激を貪欲に拾い、快楽へと変えていく。
胸に触れているのとは逆の手がひらひらのスカートの中へと潜り込み、太ももを卑猥な手つきで撫でながら位置を上げていく。そして布越しに俺のものをついっ、と指でなぞった。
「あっ!」
「気持ち良い……?もっと触ってあげるね……」
「ん、あ……っ」
そのまま布越しに擦られると、そこはさらに固さを増していく。先から漏れ出したものがじわりと下着に染みていき、その気持ち悪さと張り詰めていく圧迫感に、俺は瑠夏に縋るような視線を向けた。それを受けても、瑠夏は手の動きを止めず妖しげに口元を歪めるだけだ。
「瑠夏、あ、くっ!」
「ふふ、下着の上からでも形がわかるな……脱がせて欲しいかい?」
「っ……」
「なら、ちゃんとお願いしてごらん?」
スカートを捲り上げ、焦らすようにそこを撫でながらそう口にした瑠夏に俺は言葉を詰まらせる。瑠夏はぐっと顔を寄せ、唇同士が触れそうな程の距離で楽しげに笑った。どうしてこの男は次から次にこうも意地の悪いやり方を思いつくのかと、いっそ感心する程だ。浮かんできたいくつもの悪態をぐっと堪え、瑠夏の首の後ろへ腕を回し自分の方へと引き寄せ唇を重ねる。突然の行動に驚いたのか瑠夏は軽く目を見開くが、すぐ嬉しそうにそれを細めた。
「ん……ふ、う……」
口を薄く開くと、するりと熱い舌が入り込んできて俺の口腔を犯していく。互いに舌を絡め貪り合うと、飲み込み切れない唾液が口の端を伝っていった。
「はっ……はぁ、はぁ……っ」
「……ずるいなぁ、言葉の代わりに行動でおねだりなんて」
「……っ」
「ボクも、我慢出来なくなっちゃうじゃないか」
瑠夏の手が俺の下着の中に入り込み、中のものを取り出すと直に擦ってくる。耳に響いてくる水音がどうしようもなく羞恥を煽るが、待ち望んだ刺激に俺はついさらにねだるよう腰を浮かせてしまう。笑みを深くした瑠夏は俺の胸へ顔を寄せ、突起を口に含むと舌でねぶった。ぞくっと肌が粟立ち、快楽にあられもない声が口から勝手に漏れていく。
「あぁっ……!や、瑠夏……!」
「ん……もう我慢出来ない?いいよ、このまま……」
「く、あ……っ!」
瑠夏の手で強く擦り上げられ、身体を震わせながら俺は熱を吐き出した。スカートの内側に自分の欲の証がついてしまったことがわかり、さらに羞恥が増す。しかし身体を落ち着ける暇もなく、瑠夏は俺の出した白濁で濡れた指を後ろへ滑らせるとそのまま挿し入れ、中を性急に擦り上げる。敏感になっている身体への唐突な刺激に、俺は瑠夏へ強くしがみついた。
宥めるように頬や瞼に口付けを落としながら、瑠夏は中で蠢く指を増やしていく。しばらくしてそこから指を抜いた瑠夏は、俺の足から下着を脱がせる、が、
「お、い、何で、片方だけ……」
「ん?……深い意味はないけれど……こっちの方がいやらしい気がしないかい?」
「っ……!何言って、おい瑠、あっ!」
片脚に下着をひっかけたまま、瑠夏は俺の身体を二つ折りにするようにして体重を乗せながら自分の昂ぶりを埋め込んできた。一息に貫かれ俺は満足に文句も言えないままに、すぐ動き出した瑠夏の揺さぶりに翻弄されてしまう。
「あっ、待……っ瑠夏、激し、い……!」
「ごめん、少し我慢して……恥じらうキミを見てたら、抑えが利かない……っ」
「んっ、あ!あ、うっ……!」
俺の脚を掴んでいる瑠夏の手の力はその余裕のなさの表れのように強い、そうして求められることにさらに興奮を募らせててしまう自分も大概だと思うが。俺も加減の利かない力で瑠夏にしがみつき、深い口付けを何度も交わしながら瑠夏の激しい求めを受けいれる。
「あっ、瑠夏、瑠夏!」
「っ、JJ、そんな瞳で……はぁ……っ、まだ、ボクを煽る気かい?」
「うあっ、あ、駄目だ瑠夏、また……!」
「あぁ、いいよ何回でも……その分、付き合ってもらうけどね……」
「あ、あぁっ!」
激しい抽挿と同時に前を強く擦られ、俺は背を仰け反らせながらまた熱を吐き出す。そのときに中のものをきつく締め付けてしまい、瑠夏も苦しそうな声を漏らしながら俺の中に熱を注いだ。そうして一度俺の中から自らのものを抜くと、俺の身体をうつ伏せに転がし、どうしてか固さの失われていないそれをまたあてがう。
「っ、あ……」
「……ふふ、今日は、まだやるのかって言わないんだね」
「……アンタ、の、せいだ」
小さく呟いた言葉の意味に瑠夏は気付いたのだろうか、そのままゆっくりと昂ぶりを埋め込みながら俺の耳元に熱い息を吐いた。
「ボクのせい……?どういう意味か教えて欲しいな……」
「っ…………アンタのせいで……一回じゃ、足りなく、なった」
「つまり、まだボクが欲しいってことだね……なら、遠慮なくいくよ」
アンタが遠慮なんてしたことがあったのかと、呆れながらも俺はまた徐々に激しくなっていく瑠夏の揺さぶりに翻弄されてしまう。
その頃はすでに自分の恰好など頭になく、次に目が覚めた時俺は顔に熱を昇らせながら瑠夏に「二度とこういう服は着ないからな」と強い口調で宣言した。
そのとき瑠夏が見せた笑顔に嫌な未来しか想像出来なかったのは、気のせいだと思いたい。
おわり