縋る手の行く先は、
「……っ」
「フン、こうなってしまえばいくらお前といえど逃げられまい……なあ殺し屋?」
つけられた首輪から伸びる鎖を勢いよく引かれる。両手も手錠で繋がれてしまっているため体を支えることも出来ず無様にベッドへ倒れこむ俺を、嗜虐的な笑みを浮かべた男が楽しそうに眺めている。
今の俺は一糸纏わぬ状態で、首輪と腕に鎖をつけられている情けない恰好をしていた。瑠夏から依頼されていた仕事を済ませ戻る途中数人がかりで襲いかかられてしまい、少し大きな仕事の後だったこともあって、自分でも気付かない内に気を抜いてしまっていたようだ。手数が追い付かず散々痛めつけられたあげく気絶させられ、気付けばどこともしれないホテルの1室に、この状態で転がされていた。
上に覆いかぶさってくる、それを命じたであろう奴を俺は憎々しげに睨みつけた。
「伝説の殺し屋デスサイズが……随分と堕ちたものだな」
「何を……ぐ……か、はっ……!」
片手で首を押さえつけられてしまい、絞め殺されるのではないかという力で喉を圧迫され息が詰まる。大して自由の利かない両手で男の腕を押し返そうとすると、以外にもあっけなくその手は離れていった。
「ゲホッ、はあっ……」
「死神といえど、飼い慣らされればただの犬か?」
ジャラリと音を鳴らし首に付けられた鎖が引き寄せられる。目前に迫ったその瞳を、俺は尚も睨みつけた。
今や龍宮を仕切る一大勢力であるドラゴンヘッドのボス、劉漸。こいつが何を考えて俺を浚ったかは知らないが、油断をしていた自分への憤りで俺は半ばやつあたりとわかってもその顔を殴りつけてやりたくなる。それが出来ればこの腹の底に溜まっていく苛つきも幾分マシになるだろう。
「なあデスサイズ、キングシーザーのボスの元はそんなに居心地がいいのか?」
「何、が……っ、目的だ」
「なに、大したことじゃない。ただ貴様が身を置いている理由がわかれば、こちらへ引き入れることが出来るのではないかと思ってな」
冗談のつもりなのか口角を上げ、ククッと喉を鳴らし歪な笑みを浮かばせている劉。幾度も引かれたせいで赤く擦れてしまっている首を、奴の冷たい指がなぞっていく。
「っ……」
「ふっ……やはり貴様の目はいい……初めから従順な獣程つまらないものはないからな」
「やめ、ろ……触るな……!」
「あぁ、ようやく効いてきたか……?」
冷たい指先が触れる場所から、むずがゆい熱が生まれていく。息の荒さを隠せなくなり俺は両手で劉を押し返そうと必死に暴れるがその手を簡単にベッドへ押さえつけられ、指がまた俺の首をなぞる。
「あ、あ……っ」
「いい声で鳴けるじゃないか、なあデスサイズ」
「や……め……っ、く、う……」
体の芯に火をつけられたかのように、燻り始めた熱はどんどんと燃え上っていく。それでも劉は首をなぞる以外何もしようとしない、弱すぎる刺激が与えるもどかしさで頭が焼けつきそうになる。必死にシーツを握りしめなければ、目の前の男が何者かも忘れ縋ってしまいそうだ。
「よく効くだろう?貴様のためにわざわざ強力なものを取り寄せたんだ」
「はぁっ……!ぁ……りゅ、う……放、せ……!」
「それともまだ足りないか?なら、もっとくれてやる」
「――っ!止めろ……!」
ベッドサイドに置いてあった注射器を手にした劉は、押さえつけた俺の腕へその針を刺し、残っていた液体を全て流し込んでいく。空になったそれを無造作に置いた劉は、また俺の様子を観察するように見下ろしてくる。高まり続ける熱が全身を焼き尽くすようだ、これがさらに増したのなら、一体どうなってしまうのだろうか。
「っあ!」
劉の手が俺の腰を滑り、そのまま太腿へと下がっていく。両足を左右に無理やり開かされ羞恥で閉じようとするが、奴が間に体を割り込ませてきたためそれは叶わなかった。掌が太腿の内側を何度も撫でるように動く。
「や……め……っ」
「そうだな……刺青を入れるならここがいい、さぞかし貴様に映えるだろう」
「誰が、そんな、もの、っあ、ぁ……っ!」
突然、ギリギリ皮膚を破らない力で太腿に爪を立てられる。そのまま何かの模様を描くように赤い跡を残され、痛みに腰が逃げそうになってしまう。しかしその痛みの後からじわじわとむずがゆさが広がってくる、その感覚に劉の目の前に曝け出されたものがさらに昂ぶってしまうのがわかり、歯を喰いしばった。
「痛っ……やめ、ろ」
「クッ……痛いだけではないだろう……?」
「あっ……!」
昂ぶったものを痛いほどに握り込まれる、それでも直接触れられたことでそれは一層固さを増し、先走りを垂らし始めた。頭が痺れるほどの快楽に喉の奥から勝手に喘ぎが漏れていく、腰が浮き、さらなる刺激を求めてしまう。暴れ狂う感覚に耐えるのもそろそろ限界だった。誰でもいい、何でもいいからこの苦しさから解放してくれと、心が強く叫びだす。頭の片隅に残る理性にどうにかしがみつくように、シーツをより強く握った。
「くっ、あ……あっ……」
「ほう、まだ頑張るか……私に身を委ねるのは、そんなに嫌か?」
「ふ、ぅ……死んだって、あっ、御免、だ……!」
「フン、減らず口を……」
劉は自分のネクタイを外すと、それで張り詰めた俺のものの根元をきつく縛りつける。食い込む痛みと塞き止められた感覚に息が詰まり、苦しさが増す。
「劉……!解、け!」
「貴様が、素直に私を求めてくるようになったら、な」
「誰が……っあ!」
冷たい指が、少しの遠慮もなく俺の中へと突き入れられる。そのまま数度中を擦られると、痛みは霧散し強い快楽に挿げ替えられてしまう。張り詰めたものが解放を求めびくびくと震える、しかし縛られてしまっているそこは熱を吐き出すことも出来ず痛いくらいに昂ぶるだけだ。
「やめっ、あ、あぁっ……!」
「くくっ……貴様の身体は快楽に正直だぞ?」
「んっ……違う、っああ!」
「 雄に貫かれる快感を知っている、いやらしい身体だ」
指が増え、深く中を抉られる。頭が真っ白になる程の電流のような快感が走り、背を仰け反らせた。縛られているものがギチリと痛み涙が滲む、解放されない快感を少しでも逃がそうと荒い息を吐きながらシーツに爪を立て引っ掻く。ギリギリで残っている理性が少しずつ溶かされているのが自分でもわかり、いっそ舌を噛んで自害でもしてやろうかと考えた。
逆の手が、残った理性を崩そうとでもいうかのように縛られた俺のものを握り強く擦り上げる、喉の奥から甘ったるい喘ぎが吐き出され身体を震わせた。絶頂とはまた違う冷めない快楽に、思考が重く鈍っていく。
「あ……ん、はぁ……」
「瞳が変わったなデスサイズ……私が欲しくなったか?」
その問いかけに、もう俺は首を振ることすら出来なくなっていた。びくびくと全身を震わせながら、浅い呼吸を繰り返す。劉は満足そうに俺を見ると、さらに指を増やし中をかき回してくる。鈍い思考の中で、自分の理性が全て溶け、流れていくのを感じた。
突然、部屋のドアが荒々しく開かれた。重たい身体を動かし視線を向けると、見覚えのある金色の髪が揺れている。それが誰なのかわかりつつも、俺はそれ以上動くことが出来なかった。
「はあっ……JJ……」
「随分遅い到着じゃないか、瑠夏・ベリーニ」
「っ……劉、漸……!」
俺の属している組織キングシーザーのボス、瑠夏・ベリーニ。1人で行動するにはリスクの多く過ぎる男が、どうしてここに1人で立っているのだろう。めったに拝めないような必死の形相でドアを開き俺の名を呼んだ後、劉の姿を見るとその声が怒気を帯びる。俺はその様子を虚ろなまま見つめた。
「お前の希望通り1人で来てやったんだ……JJを放せ、劉漸」
「クッ……着いて早々にそんなに焦ることはないだろう」
「聞こえなかったか?ボクは、JJを放せと言ったんだ」
瑠夏が静かに銃を構え、瑠夏愛用のベレッタM93Rの銃口が真っ直ぐ劉へ向けられた。それでも尚、劉は不敵に微笑む。
「物騒だな、デスサイズに当たったらどうする」
「そんなヘマはしない……1発でお前の頭を撃ち抜いてやるさ」
一触即発の空気がこの場を支配する、劉が俺の中から指を抜き、素早く傍に放られた注射器を手にすると俺の首元にそれをあてがった。鋭い針が俺の皮膚に触れ、その冷たさにようやくわずかな自我が戻ってくる。
「銃を下せ瑠夏・ベリーニ……大切な家族を死なせたくはないだろう?」
「その前に、お前を殺せば済む話だ」
「っ、あ……瑠夏……!」
未だ震える身体からどうにか声を絞り出し、自分のボスの名を呼ぶ。アンタはこんなところにノコノコ一人で来て良いような立場の人間じゃないだろう、たかだか1構成員の俺なんかのために危険を冒すなんて馬鹿げている。間違っている。いくつも言いたい言葉が浮かんでは、今言うべきことはそれではないと消していく。
「JJ……待っていろ、今助けて、」
「出て、いけ……」
「……JJ……?」
瑠夏は心優しい男だ、ただの1構成員の俺ですら家族の一員として愛してくれている。そんな男が目の前で殺されそうな俺を放っておいてくれるはずがない。それに、
瑠夏が俺を抱いたとき、これからはボクがキミを守ると言ったことは記憶に新しい。瑠夏は、本当にその約束を守ってしまうだろう。
「劉に……抱かれる、だけだ。アンタが来なきゃ、命の危険、なんて……っ、あぁ!」
劉がまるで瑠夏に見せつけるように昂ぶった俺のものを擦り上げた。びくびくと身体を跳ねさせる俺のすぐ後ろで、劉は可笑しそうに笑いを漏らす。
「だ、そうだ、瑠夏……貴様の死神は、私に抱かれたくて仕方ないようだな」
「ん、あ……っ」
瑠夏が俺へ悲しげな瞳を向ける。自分は嘘も演技も決してうまくはないが、ここでしくじるわけにはいかなかった。浅ましく誰にでも腰を振る奴だと軽蔑されても、それで瑠夏の身が救えるのなら安いものだ。俺はわざと声を抑えず、劉の手に翻弄されるまま喘ぐ。
「あっ……あ、劉……!」
カシャンと小さく銃が下される音が聞こえて、俺は安堵する。そのまま背を向けてここを出て行ってくれと願ったが、それ以上瑠夏は動こうとしなかった。
「貴様……JJに何をした……」
「なに、素直に男を求めるように、薬をやっただけだ」
「……薬、だと?」
「そう気色ばむな、常習性のあるものじゃない。効果は、少々強すぎたようだがな」
「……っ」
「貴様も混ざれ、瑠夏。どちらがこの淫乱な男の主人にふさわしいか、勝負といこうじゃないか」
「なっ……劉!」
俺は焦って劉の名を呼ぶ、この男は一体何を言い出すんだ。それを受けて劉は俺の耳元に小さな声で「私1人では物足りなかったのだろう?」と囁く、それでようやく気付いた。この男は、瑠夏を逃がすための俺の嘘も演技も見抜いていたんだろう。
瑠夏が1歩、俺たちへと近付いてくる。まさか今の馬鹿げた誘いを受けるつもりなのか、焦っている俺へ瑠夏はさらに1歩、また1歩と慎重な足取りで歩みを進めている。
「それが済めば、JJを返すと約束できるな?」
「あぁ、約束しようじゃないか」
「あっ……!嫌、だ……っ!」
「劉、お前が武器をその身に隠してないという証拠は?」
「服でも脱いで見せればいいのか?なら瑠夏、貴様もその銃を置いて服を脱ぐのが当然じゃないか?」
「命令に従う気はない、まずお前がこちらの身の安全を保証しろ」
「フン……仕方ないな、確かに、呼び出したのはこちらだ、筋は通そうじゃないか」
劉は俺から身体を放し、上着、シャツと順に脱いでいく。そうして信じられないほどあっさりと上半身の衣服を全て取り払ってしまった。仮にも銃を持っている相手を目の前にしてとるような行動じゃない。瑠夏は少し面食らった表情をしたが、すぐ冷たい視線で劉を見下ろした。
「劉……何を企んでいる?」
「何も企んでなどいないさ、ほら、こちらは誠意を見せたぞ?」
「瑠、夏……」
逃げてくれ、と唇だけで告げる。この男が何も企んでいないわけがない、今この瞬間にも誰かがアンタの頭を撃ち抜こうと狙っているかもしれないんだ。今の俺はその気配を探れるほど冷静じゃない、頼むから早く逃げてくれ、俺のことは切ったっていいんだ、そうするべきなんだ。出来なくたって、するべきだ。
俺の視線を受け、瑠夏は俺を真っ直ぐに見つめ返す。数秒の間の後、銃を手から離し床に置くと、劉に倣うように上半身の服を脱いでいく。そうして脱いだ服を乱暴に放ると、ギシリとスプリングをきしませながらベッドへと乗り上げ、俺をその腕で包み抱き締めてくる。
「瑠夏、アンタ……っ」
「JJ……辛かっただろう?今楽にしてあげるよ」
「っ、あ、あぁ!」
瑠夏は縛られ痛いほどに張り詰めているそこを指でなぞると、するりとネクタイを解き優しく擦り上げてきた。とっくに限界だったそこはその刺激だけで瑠夏の手へと勢いよく白濁を撒き散らしてしまう。ようやく得られた解放感に、俺は瑠夏へと力の抜けた身体を預ける。程なく、また身体の奥から熱が昇ってくるのがわかった。1度溶けてしまった理性はもうその感覚に逆らうことが出来ず、瑠夏に自分の身体を擦り寄せる。
「あ……はぁ、瑠夏……」
「あぁ、JJ、キミの望むようにしてあげる」
俺の髪をかき上げ、額に口付けを落とすとその唇をゆっくりと頬から首筋、胸へと移していく。突起を口に含まれ舌で転がされると、甘い痺れが身体を跳ねさせた。
「あっ、ん……!」
「素直に感じていいんだJJ、もっとボクを求めて……」
唇が合わさり、舌が優しく俺の口腔を犯す、それに自分からも舌を絡め貪欲に瑠夏を貪った。劉が見ているのがわかっても止めることは出来なかった、羞恥も忘れ、今目の前に居る相手を求めることしか俺の頭にはない。本能のままにもっととねだる俺を、それでも瑠夏は優しく受け入れてくれる。
「……フン、優しく飼い慣らすのが貴様のやり方か、瑠夏」
「……これから愛し合う相手に優しくするのは当たり前だろう?それとも、中国の男はベッドでの愛し方も学ばないのか?」
瑠夏はまた胸の突起を舌で転がしながら、すでに昂ぶってしまっている俺のものをゆるく擦り上げる。俺はみっともなく腰を浮かし、もっと強い刺激を求めるように瑠夏を見上げる。耳障りな音を鳴らし俺の腕を拘束する手錠が邪魔だ、今は肌を触れ合わすだけでも気持ちがいいのに、これでは瑠夏と抱き合うことも出来ない。
「ん、う、あぁ……っ瑠夏、もう……!」
「ん……そうだね……キミのそんな表情を見たら、ボクも我慢出来ないよ」
捕食者の瞳が俺を射抜く、それだけで俺はこれからの期待に背筋を震わせた。瑠夏の骨ばった指が後ろへと入り込み、中を擦りながらその数を増やしていく。すでに劉によって解されていたそこは簡単に瑠夏の指を飲み込み、次々と快楽だけを拾っていた。
すでに俺に理性など残っていなかった。瑠夏に優しく溶かされたことで劉にされていたとき以上の快楽が身体を支配し、与えられる刺激を素直に受け入れる。その方が気持ち良いことを本能的に悟ったのか、獣のように瑠夏を求めていた。貫かれるその瞬間を、待ち焦がれていた。
「……よかった、まだ劉に抱かれてはいないんだね」
「あっ、あ!」
「あんな男にキミを抱かせたくはないけれど……せめて、ボクが優しく愛してあげるから」
「瑠、夏……んっ……あぁ!」
指が抜かれ、熱い昂ぶりがあてがわれる。それが後ろをきついくらいに埋めながら入り込んでくると、待ち望んだ刺激に耐え切れず俺は熱を吐き出してしまった。それでもまだ足りず、さらに深く飲み込むため瑠夏に脚を擦り寄せ腰を揺らす。
「瑠夏……っ、あ、瑠夏……!」
「っ……JJ、焦らないで……ね?」
俺を落ち着かせるように、瑠夏が頬や瞼、額と啄ばむような口付けを落としてくる。瑠夏の表情はいつもと変わりなく優しげなものだったが、俺を気遣っているのか獰猛さを必死に押し殺しているようにも見えた。自由の利かない両手がもどかしい、今すぐにでも瑠夏に縋りついて自分から瑠夏のものを全て飲み込んでしまいたいのに。
ふ、っと、顔の上に影が落ちる。視線を移すと自分から作り出したこの事態を何故か静観していた劉が、ゆがんだ笑みで俺を見下ろしていた。そして俺の手を引くと、カチャリと、ついていた手錠を外す。
「あっ……」
「本能のままに男を求めるところをこの私に見せてみろ、JJ」
瑠夏が汚らわしいものを見るような瞳を劉に向ける、それを受けた劉は喉を鳴らすように笑うとまた離れていく。俺は劉の言葉に従うようにして、自由になった手を瑠夏へと伸ばし、その身体を押し返す。
「JJ……」
「瑠夏……っん、ああ!」
無理矢理瑠夏を座らせると、俺はその上に乗り自分から腰を沈める。先程よりずっと深く抉られる感覚、きつい圧迫感を無視し、そのまま一気に瑠夏のものを飲み込んだ。そして休むことなく瑠夏の肩に手を置き、自分から腰を振る。ただ気持ち良くなりたいと、それだけを思って瑠夏を求めた。
「あっ、あぁ……はぁ、あ、んんっ!」
熱い昂ぶりが自分の中を擦り、貫く。触れられてもいない俺のものはその感覚だけですっかり張り詰めてしまっていた。俺の行動を抵抗せず受け入れていた瑠夏の呼吸が荒くなっていく、俺の首元へと顔を寄せるとそこへ苦しげに熱い息を吐いた。そして両手で俺の腰をつかみギリギリまで持ち上げると、一気に落とされる。深く激しい貫きが数度繰り返され、俺と瑠夏はほぼ同時に熱を吐き出した。
それでも、快楽の波は完全に引いてはくれない。
「JJ……大丈夫か……?」
「はぁ……は……っ」
「ごめん……最後まで優しくしてあげるつもりだったんだけど」
瑠夏は俺の中から自身のものを抜くと、唇同士が重ね入り込ませた舌で俺の口腔を優しく舐める。舌同士が絡み合い、飲み込みきれない唾液が口の端を伝っていく。また、ぞくぞくと身体が熱を上げていくのがわかった。
「おい、いつまで2人で楽しんでいるつもりだ」
首に付けられている首輪が引かれる、そのまま劉の腕の中に抱き込まれると今瑠夏のものが抜けていったばかりのそこに指が突き入れられた。そして今出されたものをかき出すようにして、劉の指が俺の中で蠢く。どろりと、その指を伝うようにして瑠夏が俺の中に出した白濁が流れてくる。
「いや、だ……っ……!」
「孕むわけでもないんだ、残しておいても仕方ないだろう?」
「あっ、瑠夏……っ!」
その腕から逃れようと力の入らない身体で暴れ、瑠夏に縋るように手を伸ばす。途端うつ伏せに倒され、後ろへ熱の塊が捻じ込まれた。それが何か悟り、嫌だと身を捩るがすっかりやわらかくなってしまったそこは抵抗なく劉のものを飲み込んでいってしまう。届くことなくシーツへ落ちた手を、縋り求めた相手がすくい、指を絡めてくれる。
「JJ……」
「瑠、夏、あ、あぁ……!」
「まるで刷り込みをした雛のようじゃないか……そんなに瑠夏に抱かれたのが良かったのか?」
「黙れ劉……無駄口を叩くのなら、さっさとJJを解放しろ」
「貴様だけ楽しんで終わるつもりか?私にもゆっくりこの男の身体を味あわせろ」
「――っ、ああぁ!」
熱い昂ぶりが性急に抽挿を始める、乱暴なその行為も溶かされきった身体は受け入れ、簡単に快楽を見つけ出していく。瑠夏を求め抱かれていたときとは違う一方的に押し付けられるような抱き方、それでも俺はどんどん昇り詰めてしまう。この男を受け入れたくなどないのに。自分の自由になった両手が恐ろしくなり、俺は絡められた瑠夏の手を強く握った。
放さないでくれ、手が放されれば俺はきっとこの男に縋ってしまう。また快楽だけを求める獣に成り下がってしまう。アンタの手だけが、ギリギリで俺を繋ぎとめる。
「あっ……ん、あ……っ!」
「その手が貴様の最後の理性か?……なら、今すぐ崩してはつまらないな」
「は、あっ、あ!」
「またこういう機会を持とうじゃないか瑠夏、こうも淫乱な男、1人の手には余るだろう?」
「断る、今回きりだ。本来ならお前になんて指一本触れさせたくもない」
「ククッ……それは、残念だ」
俺を激しく揺さぶりながら、その口振りは余裕でどこか含みすら感じる。それから2人は1度も言葉を交わすことなく、瑠夏は俺の手を強く握り、劉は俺を揺さぶり続けた。容赦ない攻めが終わる頃には、俺の意識はぼやけ、今にも落ちていきそうな程に疲弊し切っていた。
「ジャッジ役が潰れたか……なら勝負はお預けといったところか?」
「今回きり、と言ったのが聞こえなかったのか?」
「そんなに大事ならば、鳥籠にでも入れて置いたらどうだ?それでおとなしくしている男ではないだろうがな」
「知ったような口をきくな、劉……約束通りJJは返してもらう」
フン、と鼻を鳴らした劉が俺の首に付いた首輪を外す。瑠夏は丁寧な手つきで俺に服を着せると、自分もシャツを着て上着を羽織ると俺を抱きかかえるようにしてベッドから降りる。警戒するように銃を手に取ると、劉へとその銃口を向けながらドアへと歩き出す。
劉は動かなかった、銃を向けられて尚、不敵な表情で俺たちを眺めている。廊下へと出てドアを閉める瞬間、不吉な言葉が俺の耳に届いた。
「では、またな、デスサイズ」